忙しい人のためのサプライチェーン排出量算定 (2)
はじめに
お勉強したことを、せっかくなのでメモしています。
算定を始める前に
初めに「算定目的」を設定しよう。
「算定目的」に応じて算定範囲、精度が決まります。
目的がなければ、どこまで詳細に算定すればよいのか判断ができません。
算定することが目的にならないよう、目的をはっきりさせましょう。
目的次第では、これから紹介する簡易な算定方法では不十分なこともあります。
算定方法の基礎
ほぼこの基本式で解決します。
排出量=活動量x排出原単位
カテゴリごとに、活動量、排出原単位となるパラメータが異なるだけですので、気楽に見ていきましょう。
カテゴリーごとの簡易算定方法の紹介
1 購入した製品・サービス
原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
算定方法1
調達量x物量あたりの排出原単位
排出原単位DB「5」参照
算定方法2
調達金額x金額あたりの排出原単位
排出原単位DB「5」参照
ポイント
調達物の カテゴリごと、事業部ごと など、大きな分類にくくって算定もできます。
2 資本財
生産設備の増設
(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
算定方法
年間設備投資金額x資本形成部門ごとの資本財価格あたり排出原単位
排出原単位DB「6」参照
ポイント
事業者全体 または 事業別 で算定できます。
3 Scope1,2に含まれない 燃料及びエネルギー活動
調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
算定方法
燃料およびエネルギー種別の調達量x燃料およびエネルギー種別ごとの調達量あたり排出原単位
排出原単位DB「7」参照
4 輸送、配送(上流)
調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
算定方法
① 自社が荷主の輸送
省エネ法の荷主責任者報告値を使用。
+
② 自社が荷主でない輸送
(調達物の重量x輸送距離)x輸送手段別の排出原単位
排出原単位DB「2-3」参照
ポイント
データが取得できない場合は、輸送距離、輸送手段のシナリオを作成して算定することができますが、過小評価にならないよう注意が必要です。
調達物の重量x輸送距離 は 調達物ごとに計算した結果の合算です。
調達物の重量x輸送距離 =
(調達物1の重量x調達物1の輸送距離)+
(調達物2の重量x調達物2の輸送距離)+
(調達物3の重量x調達物3の輸送距離)+
・・・
5 事業から出る廃棄物
廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送、処理
算定方法
廃棄種別ごとの廃棄物処理委託量x廃棄物種別ごとの処理時の排出原単位
排出原単位DB「9」参照
6 出張
従業員の出張
算定方法1
出張旅費金額x出張旅費金額あたりの排出原単位
排出原単位DB「11」参照
算定方法2
従業員数x従業員数あたりの排出原単位
排出原単位DB「13」参照
7 雇用者の通勤
従業員の通勤
算定方法1
通勤費支給額x通勤費支給額あたりの排出源単価
排出原単位DB「11」参照
算定方法2
(従業員数x勤務日数)x従業員の勤務日数あたりの排出原単位
排出原単位DB「14」参照
8 リース資産(上流)
自社が賃借しているリース資産の稼働
(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
Scope1,2として算定済み
9 輸送、配送(下流)
出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
算定方法
(出荷物の重量x自社が荷主の輸送以降の輸送距離)x輸送手段別の排出原単位
排出原単位DB「2-3」参照
ポイント
消費者向けの製品の場合は、小売店での販売にかかわる排出も含みます。
実際の輸送距離などのデータ取得は困難なことが想定されます。
データが取得できない場合は、輸送距離、輸送手段のシナリオを作成して算定することができます。
10 販売した製品の加工
事業者による中間製品の加工
算定方法
中間製品加工時のエネルギー使用量x製品出荷量xエネルギー種別の排出原単位
排出原単位DB「1」参照
ポイント
実際の加工時のデータ取得は困難なことが想定されます。
データが取得できない場合は、輸送距離、輸送手段のシナリオを作成して算定することができます。
11 販売した製品の使用
使用者による製品の使用
算定方法
① エネルギー使用製品
(例.自動車、エンジン、家電)
(販売した最終製品の出荷量x1日当たりの平均使用時間x耐用年数)x稼働時に使用するエネルギーの排出原単位
排出原単位DB「1」参照
+
② 燃料
(例.ガソリン、天然ガス、石炭)
製品(燃料)の出荷量x燃料の使用(燃焼)時の排出原単位
排出原単位DB「1」参照
+
③温室効果ガスそのものや使用時に温室効果ガスを排出する製品
(例.ドライアイス、消火器、肥料)
(製品の出荷量x漏洩率)x地球温暖化係数
排出原単位DB「1」参照
ポイント
報告対象年に販売した製品の生涯における稼働時排出を計上します。
12 販売した製品の廃棄
使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
算定方法
(製品ごとの廃棄物量x製品出荷量)x廃棄物種別ごとの処理時の排出原単位
排出原単位DB「9」参照
13 リース資産(下流)
自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
算定方法
貸し出しているリース資産の年間エネルギー使用量xエネルギー種別の排出原単位
排出原単位DB「1」参照
14 フランチャイズ
自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
算定方法
フランチャイズ加盟店の各種エネルギー使用量xエネルギー種別の排出原単位
排出原単位DB「1」参照
15 投資
株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
算定方法
① 株式投資に関する算定
株式保有数x投資先の1株あたり排出原単位
(投資先の1株あたり排出原単位 = 投資先の年間 Scope1,2 排出量 / 投資先の総発行株数)
投資先のCSR報告書などの Scope1,2 公表値を参照
+
② プロジェクトファイナンスに関する算定
投資先プロジェクトの生涯稼働時各種エネルギー使用量xエネルギー種別の排出原単位
排出原単位DB「1」参照
ポイント
プロジェクトファイナンスは、投資した年にプロジェクト期間中の排出量のうち投資割合分を一括で計上します。
算定時の参考資料
排出原単位データベース や 算定用シート など算定に役立つ公式のファイルはこちらです。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_tool.html
次回
だいぶ頭が整理できました。
気が向いたら、サプライチェーン排出量算定をサポートできそうなサービスを作ってみようかな。